USENグループ創業者・宇野元忠の人生にせまる その2

宇野元忠さんの経営戦略はズバリ〝先手必勝〟

宇野元忠さんが有線放送事業に着手した頃は、有線放送の草創期でしたが、小資本で開業が可能で、食べて行けるくらいの利益はすぐに出る商売として、1960年代には、全国の飲み屋街を中心に300~400の有線放送業者が生まれました。

しかし、その業者の多くが真剣にこの事業に取り組んでいたわけではありませんでした。

元忠さんが様子を探る意味で、何軒か同業者を訪ねてみると、社長を始め社員全員が雀荘にいて、店から混線トラブルの連絡が入ったので、そのうちのひとりが「線の修理に行きますわ」と席を外したところ、「おまえが抜けたら、麻雀がでけんようになるから行くな」と社長が止めたり、放送所で一升瓶を抱えて、花札に熱中している同業者もいました。

〝有線はヤクザ商売〟という当時のマスコミの風潮も、他業種で成功している事業家が参入してこない原因にもなりました。

これがのちに、大阪有線放送社のシェア独占に繋がっていきます。

元忠さんは、徳島、金沢、富山、岡山から九州の一部と、昭和40年代前半に北陸と中国四国地方に進出していきました。

この頃には、他社に先駆けて、有線を4チャンネル化。

大阪有線と契約している店は、スナックには演歌が流れ、喫茶店にはポピュラー音楽が流れていました。

1970年には北海道に進出。

1971年には資本金を1億円に増資して、1973年7月には大阪・ミナミに8階建ての本社ビルが完成します。

この頃には、埼玉県を皮切りに関東にも本格進出を開始します。

宇野元忠さんはドケチ。しかもそれを誇りにしていた

宇野元忠さんは自他が認めるドケチでした。

ネクタイは1000円の安物。

そのネクタイでメガネを拭き、靴は合成皮革。

腕時計はデジタル時計。

クルマは国産車。

秘書も運転手もおらず、スケジュールは自社カレンダーに元忠さん自らが100円のボールペンで書き込みます。

あるとき、同志社大学を卒業後、リクルートを経て、大阪有線放送社に入社した長男の宇野康彦さんが1万円の高級ボールペンを使っているのを見つけると、「それと、この100円のボールペンと書いてみてどう違うんや! おまえは見かけだけに9900円もはらっとる。そんな馬鹿げたことをしたらイカン!」と大激怒。

また、自宅も大阪の下町・大阪環状線桃谷駅近くに構えており、豪華な邸ではなく、ごくごく一般的な住居でした。

社長室はあるものの、広さは10畳ほどで本社ビルの片隅に板で四方を仕切っただけの粗末なもの。
いつもドアは開けっぱなし、シミの付いたネズミ色のカーペットに時々寝転んでは、新聞を読み、無精ヒゲを生やして、モジャモジャの髪を掻きむしりながら話をする姿は、1990年を迎える頃には、年間売上高550億円以上 経常利益40億円以上になった会社の社長とは思えませんでした。

唯一の贅沢、それは会社近くの庶民的な焼肉屋で、腹一杯焼肉を食べることでした。

すっかりメディアから姿を消した、メイテック・VSNの創業者である関口房朗さんも、「元気の源は肉。特にステーキ」と断言していましたが、元忠さんも焼肉でパワーをつけて事業に邁進していたのでしょうか。

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1977年 大阪有線放送社 東京中心部へ進出

1977年1月には、同業他社に先駆けて、これまでの4チャンネルから12チャンネルの放送を開始します。飲食店ばかりではなく、非飲食店へ。
元忠さんは長年、自分の頭に思い描いていたテーマに狙いを定めていました。

「全国に事業所は700万ある。みんな新聞を取って、有線も取る。BGMは冷暖房サービスと同じや」
と従業員に檄を飛ばしました。

1976年、全国180ヶ所あった大阪有線の放送所は、1981年には450ヶ所、1984年には700ヶ所を超えました。

そして1983年度の決算では売上高300億円を超えます。

その最中の1980年と1985年に元忠さんは有線ラジオ法違反で逮捕されています。
それでも、元忠さんは自分の論理を振りかざして、事業に邁進します。

宇野元忠さんは、戦後のドサクサに少年期・青年期を過ごして、起業した社長にいるタイプのかなり癖の強い人物でした。
あるとき、家族で食事をしながらテレビを見ていると、ニュースが自殺事件を報じました。

そのとき、元忠さんは「俺は自殺するヤツの気がしれん。俺やったら、自殺に追い込むヤツを全員殺したる」と言い放ちました。
これは強がりやポーズではなく、タチの悪い業者から自宅に「人を殺すのは何とも思っとらん」などの嫌がらせ電話があったとき、「殺すなら、殺せ!」と怒鳴りつけて、電話を切ったというエピソードにもあらわれています。

しかし、ひとつの仕事に打ち込んだ人物として、以下の名言を残しています。

“「俺がなぜ大阪有線の社長かといえば、俺がこの会社で一番働いているからや。もし、俺よりこの会社で働いてる奴がいたら、そいつが社長や」”

その後も様々なトラブルと隣り合わせのまま、大阪有線放送社は業界のパイオニアとして、圧倒的シェアを誇ることになります。
業界シェアは何と70%。

元忠さんは長男・康彦さんに「この事業は森林事業みたいなもんや。俺が木を植えた。これからはいいかっこできる。そういう意味ではおまえは幸せやな」と話しました。

1990年代に入るとカラオケ事業にも進出。
なぜか、松田聖子を激推ししていたU-kara(ユーカラ)を憶えていらっしゃるでしょうか?

1998年8月期の決算では、大阪有線放送社の売上高は993億円に達します。

創業者 宇野元忠死去。事業は次男・宇野康秀氏に引き継がれる

しかし同年。元忠さんの身体がガンに冒されているいることがわかります。
元忠さんは、身売りを決意して、あちこちに話を持ち込みますが、交渉はうまくいきません。

相当の売上高と利益を上げていましたが、元忠さんの個人保証で800億円もの有利子負債があることがネックでした。

結局、元忠さんは、次男の康秀さんを呼び、二代目として継がせることにしました。

康秀さんは1963年生まれ。大阪清風中学校・高等学校を卒業後、上京して明治学院大学法学部に入学。
在学中は起業イベントサークルで活躍後、88年に卒業するとリクルートコスモスに入社しますが、翌年に4人で採用コンサルティングをおこなうインテリジェンスを創業します。

この4人は宇野康秀さん、鎌田和彦さん、島田亨さん、前田徹也さんですが、康秀さんが元忠さんに起業したことを伝えに行くと、

「そんなの、失敗するに決まっている。自分の子どもが社会に迷惑を掛けるのは嫌だから止めろ」

と言われて、それ以来、没交渉の日々が長く続きますが、90年代後半になって、康秀さんが帰郷した折に、元忠さんがインターネットビジネスの話をするなど、一定の関係回復はみられていたようです。

インテリジェンスには、のちにサイバーエージェントを創業することになる藤田晋氏が新卒で入社しています。

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大阪有線放送社の社長を継ぐことに、当初、康秀さんは首を縦に振りませんでした。
あれほどまで父親に反対されて、創業したインテリジェンスは、1998年9月期の決算で、売上高89億4600万円 経常利益2億6600万円をはじき出す企業となり、株式上場準備に入っていたこと。
兄の康彦さんが取締役で大阪有線放送社の中軸にいたこと。そして、二代目と呼ばれるのが嫌だったというのが理由です。

しかし、母親の説得により、社長就任を承諾します。

その年の11月、元忠さんは63歳で亡くなります。

元忠さんが亡くなる4ヶ月前に社長の座に就いた康秀さんは、元忠さんが社長を務めていた時代に問題となっていた、ケーブルの架線について、電柱の管理者の許可を取っていないことを解決するために奔走します。

行政側との話し合いを進め、康秀さんが会社を継いでから2年9ヶ月後に、大阪有線放送社は有線ブロードネットワークスに社名を変更したあと、株式の上場にまで漕ぎ着けます。

阪神淡路大震災では、いち早く救援物資を持って神戸に駆けつけたエピソードも

阪神淡路大震災が発生した1995年1月。震災発生から3日目。大阪有線放送社は宇野元忠さんが陣頭指揮を執って、救援も何も来ていない時期に、大阪の本社から大鍋いっぱいの肉団子を社員総出で運び出し、被災地の人々に炊き出しをしました。

「お客様だろうがそうでなかろうが関係ない。俺たちはこの土地でお世話になっているんだ。手伝えることがあれば何でもやらなければ」

というのが、創業者・宇野元忠さんの強い思いでした。

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最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
(時期未定ですが、加筆・修正予定です)

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